はじめに
本材質は、20年ほど前からドイツを中心にEC諸国で使用されている材料で、近年アジア諸国の発電向けプラント事業に対しても使用されてきており、弊社への問い合わせも増えてきています。
また、東京ビックサイトで行われたプラントショーに本件を紹介したところ、内外から様々な反響が有り、『配管技術Vol.58(2016年6月号)』にも掲載いただいております。
そこで、ここでは簡単な本製品に対するご紹介をいたします。
WB36の特徴
WB36は、細粒フェライト鋼で0.5%~0.8%の銅を添加し析出することにより、高強度と高靭性を可能にした材質です。
素材メーカーから出ているデータによれば、600℃以下の温度域では、火STPA28と同等の強度で有ることが報告されており、これまでの炭素鋼の二倍近い強度があるとされています。
また、現在のところ日本国内の法規・規格では本材質の対する規定が無い為、EN規格及びASTM規格で規定されている成分及び機械的性質の要求値を第1表~3表に示します。
この様に、常温での耐力値が440N/mm2以上、引張試験値が610N/mm2と非常に高い要求値となっています。
試作結果
本材料の需要は、大口径で厚肉品が予想される為、外径φ318.5~φ609.6mmで肉厚33~50mmのエルボとティーの試作を行いました。
それぞれの製品は、全て熱間塑性加工で成形を行った結果、製品寸法及び品質的に問題無いことが確認されました。
【写真】
上(青):ティー最終製品カットモデル
左(赤):エルボ最終製品カットモデル
製品品質
製品には、焼入れ後焼戻し熱処理(QT)を実施し、製品本体より採取した試験片に対して、要求される性能を確認した結果は以下の様になっています。
1) 変形特性は、炭素鋼及び合金鋼と同等で有るので現状の製造範囲の製品を供給出来る。
2) 強度特性については、EN規格及びASTM規格を充分満足しており、耐力値500N/mm2以上、引張強さ:650N/mm2以上の高強度の製品となっている。
3) 低温衝撃性についてもQTで有れば遷移温度-40℃以下を確保でき、焼ならし後焼戻し熱処理(NT)で有っても-20℃以下で有り充分な靭性がある。
4) 組織的には、ほぼ均一なベイナイト組織になっており、安定的な溶接が可能と考える。
まとめ
本材質の製品は、当社では国内はもちろんのこと、海外に対しても未だ納入実施実績は有りません。
しかし、世界中で電力の需要がますます高まることを考えた時、より効率的で廉価で安全性の高い配管部品が求められるものと考えています。
技術部 吉本
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