機械試験「引張試験」

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管継手を製造する際に、材料や製品の評価を行うために様々な試験を実施しておりますが、管継手に付随する各種試験のうち、機械試験は、製品の性能の一つである機械的性質を調べるためのものです。

機械的性質とは、金属が持っている力学的な性質の総称で、代表的なものは下記となります。

▼各機械的性質試験の相関関係▼

今回は、丈夫さ(強度・剛性)を確認する方法である「引張試験」についてご紹介いたします。

引張試験とは、試験片を一定方向に引き伸ばし,伸びの量と、その伸びを引き起こすのに必要な荷重を試験片が破断するまで連続的に測定し記録する試験です。伸びと荷重を記録した応力-ひずみ線図(応力-ひずみ曲線)から、縦弾性係数(ヤング率)、降伏点、引張強さが得られ、破断した試験片から伸び率が、また棒状試験片を使用した場合には、絞り率を得ることができます。

引張試験を開始すると、ばねの伸びと弾性限度以下の荷重は正比例するというフックの法則に則って、伸びと荷重は、直線に右肩上がりに上昇します。この直線の傾斜ぐあいで、変形のしにくさが分かり、縦弾性係数(ヤング率)と呼ばれています。(傾斜が寝ていると変形しやすく、傾斜が起きていると変形しにくい)。

直線が終わるポイントが、弾性限界点で、そこから、破断するまで、伸び・荷重の変化を記録します。場合により鉄鋼材の場合、弾性限界点の後、上降伏点、下降伏点のリューダス帯を経て破断に至ります。

鉄鋼材の塑性変形 (加えていた力を逃がしても元には戻らなくなる状態)を金属組織・原子レベルで見ていくと、弾性限界を超えた後の金属組織は、結晶内の原子配列が大きく変わることにより、元の原子結合が維持できなくなり、結合が転移していきます。塑性変形による転位によりFe原子の格子の中にC(炭素)が入り込む格子欠陥が生まれ、結晶中に蓄積されていくことで、結晶内部を変形させる抵抗力が大きくなるために、少しずつ加工硬化が生じます。この加工硬化により、引張強さは、耐力値よりも高くなります。

なお、金属の塑性変形は、説明したような転位のすべり運動によるものですが、ほかには、双晶変形、マルテンサイト変態、高温のクリープ変形などがあげられます。

また、鉄鋼材の場合、上降伏点から下降伏点までに現れる引張方向に対して45度に現れる筋状をリューダス線といいますが、塑性変形が始まったところは少ない応力で変形できるため変形が進み(試験片コーナー部)、塑性変形が始まっていないところは比較的高い応力が必要なので変形しないという変形のムラにより発生し、塑性変形が進んでいくと加工硬化により、始まっていない箇所と同じ強度になることで、リューダス線は伝播していきます。

鉄鋼材であっても、配管用炭素鋼では上降伏点、下降伏点が、明確に分かるケースはまれであり、弊社の場合は、0.2%オフセット耐力を使用しています。

この0.2%オフセットは、縦弾性係数の線から0.2%伸びた点(0.2% オフセット)から平行に引いた線との交点となります。

なお、焼なましを行った鉄鋼材の様に、明確に上降伏点が分かる場合には、この点を、降伏点とします。

日本語にするとJIS規格の用語では降伏応力と、耐力と表現が違いますが、アメリカ英語ではどちらも対応英語はYield Strength となります。これはASTM材料規格では、0.2%オフセット又は0.5%オフセット耐力での強度を規格要求値として規定していることに起因していると思われます。

なお、イギリス英語では、降伏点を Yield Point、耐力をProof Strengthと区分けされており、日本のJIS規格は、国際規格であるISO規格に準じていますので、同じように区分けをしていると想像されます。

そして、耐力を超えて、試験片が破断するまでの間に、試験片が耐えた最大の試験力を引張強さといいます。

引張試験の伸び測定は、基準点が無いとどれだけ伸びたのか判別できませんので、試験片の平行部に標点と言われるポンチを打ちますが、この標点を分かりやすくするために写真の様に、桃色の円で囲っています。

材料規格で規定されている伸びとは、破断時全伸び(弾性伸びと塑性伸びを合わせたもの)を指しており、破断後の永久伸びを原標点距離に対する百分率で表します。

計算式、(破断後の最終標点距離-試験前の標点距離)÷ 試験前の標点距離×100 にて得た値となります。

引張試験の試験片は、JIS規格で、板状、棒状、管状、円弧状の試験片形状が規定されています。

継手で使用する代表的な試験片番号と試験片形状は下記になります。

引張試験片の採取は、製品本体又は余長部から供試材を採取する場合と、標準供試材を作成する場合があります。なお、標準供試材は、同一溶鋼の素材から採取し、製品と同一熱処理条件の熱処理を施したのち試験片を採取し、引張試験を実施します。

また、特別な要求により、管継手納入後に加えられる予定の熱処理(周溶接後の溶接後熱処理:PWHT)を標準供試材に更に加えて、管継手の機械的性質をシミュレーションした引張試験を行い、強度保証を行うことも行っております。

技術本部

各種鋼材材料での引張試験リーフレット

 

 

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