現在の日本では、火力発電による発電量が半分以上を占め、主な基幹電源として活用されています。特に日本の火力発電所は、蒸気温度約600℃、蒸気圧力約25MPaという超々臨界(USC:Ultra Super Critical)火力発電プラントが主流であり、高い熱効率による省燃料化と二酸化炭素(CO2)排出量削減を実現しています。
上部写真は、火STPA28管継手(42B 90度エルボ(国内最大級のシームレス管継手))です。
原子力、火力を含む発電プラント建設に欠かせない配管部材として使用されるベンカン機工が製造する管継手は、日本の発電プラント建設技術と共に成長し、高度化する配管ニーズに技術力で応えてきました。火力発電プラント分野では、一部のUSCプラントが長い運転期間を達成しており、そこで使用される管継手での大きなトラブルが報告されていないことから、弊社の製造・製品技術の安定性を証明していることが言えると考えています。
ベンカン機工のメイン商材に「改良9Cr-1Mo鋼(火STPA28等)」の管継手があります。前述のとおり、USCプラント配管では高温かつ高圧下の環境に耐える材料が求められ、改良9Cr-1Mo鋼はこのような環境で使用できる材料の一つです。改良9Cr-1Mo鋼の配管は、主蒸気管といった大径・厚肉配管で使用されるケースが多くあり、また管継手もこれらに合わせ大径、厚肉材での製品化が進められてきました。
日本国内の火力発電所の配管設計、施工に関連する技術基準として経済産業省が定めた火技解釈(発電用火力設備の技術基準の解釈)があります。改良9Cr-1Mo鋼としては火STPA28鋼等が規定されています。
火STPA28と記されると、一般的な規格の材料名と異なり漢字が含まれるので不思議な感じがあります(火技解釈の材料では,それを示すため材料記号の字頭に「火」が付けられています)。火技解釈では、これらの材料の機械的性質等の規定および他の規定が具体的に定められています。
改良9Cr-1Mo鋼(火STPA28等)管継手のステンシル例
改良9Cr-1Mo鋼では、特にクリープ特性が重要になります。クリープとは、とある温度環境以上で金属材料に持続する応力が作用すると、時間の経過とともに歪みが増大し、最終的には破断が発生する現象のことを指します。改良9Cr-1Mo鋼は、元々耐クリープ材料として開発された経緯があることから長寿命が期待できますが、製品の製造技術、成分管理及び熱処理技術等の影響で期待される寿命に満たなくなる可能性もあります。
ベンカン機工では改良9Cr-1Mo鋼製管継手の品質保証の一環として、管継手本体より採取した供試材を用いクリープ破断試験(クリープラプチャー試験)を行い、想定される使用環境下でのクリープ性能評価を行っています。
実例として、日本の材料メーカー製の鋼管(火STPA28)製管継手でのクリープ特性を次に示します。
改良9Cr-1Mo鋼管継手管継手から採取した供試材のクリープ結果(例)
外部の比較データおよび火力規準に関連する規定(発電用火力設備における高クロム鋼に対する寿命評価式)と対比すると遜色無くかつ寿命評価式以上のクリープ寿命が確保されています。
これは、材料選定、管継手の製造技術及び熱処理条件・技術が適正である証拠と言えます。
ベンカン機工では、このようなクリープデータを保有しており、お客様ニーズに合わせた材料選定および確かな技術を基とした製造体制で、日本および海外の発電インフラの安全・安心を支えています。
正直、かなりの費用を投じて改良9Cr-1Mo鋼管継手の品質保証を確保しておりますが、配管のクリープ破壊によるブラックアウト(全域停電)と言った最悪の事態を発生させないために、このデータが社会に役立てば我々の責務は果たせたと信じています。
火力発電は、今後も基幹電源として長期で残ると予想され、更にアンモニア混焼およびCCS技術の併用等といった新しい技術との組み合わせやA-USC(先進超々臨界:Advanced-Ultra Super Critical)等の新しい技術が導入されようとしています。
ベンカン機工では,このような低炭素社会の実現のための製品を提供し続けます。
技術本部
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